お菓子やクッキーのギフトを考えてみたとき、私自身の原体験にYOKU MOKU(ヨックモック)があることに思い至りました。どうして心に残っているのでしょうか。
ヨックモックの思い出
子どもの頃の記憶にあるのは、缶の蓋を開け、紙を開くと綺麗に並んだ「シガール」で、そこには特別な空気がただよっていました。
「シガール(Cigare)」とはロール状に巻かれたバタークッキーで、それがさらに一つ一つビニールの個包装になっているもの。他には四角い包装の「ビエ」シリーズ。“ビエ”は“折り畳んだ紙片”という意味で、二つ折りにしたクッキーにミルクチョコレートが挟まれているドゥ―ブル ショコラオレは本当に大好きなおやつでした。
そんな記憶は、大人になってもふと思い起こされました。会社でいただいたものが配られたり、何かのパーティーで置いてあったり。個包装をあけるたびに懐かしさを感じて、そんな時はほっと一息、ティータイムが優雅になったものです。
ヨックモックとシガール誕生
私のように、子どもの頃からヨックモックに馴染みのある方も多いのではないでしょうか。ヨックモック社は2019年に設立50周年を迎えていて、その歴史がこちら(ヨックモックの軌跡)にまとめられていました。
創業の時に誕生したのがこのシガール。当時バターをふんだんに使ったクッキーの量産は難しいとされていたなか、偶然ひらいた画集にあったフランス人画家による『巻菓子のある静物』(《巻菓子のある静物》 | ルーヴル美術館 | パリ)がヒントになったといいます。
まさに、この絵にはシガールのようなお菓子が印象的に描かれています。
さっそく試作していくと、この形状はクッキー生地を補強する役割とともに独特の食感を作り出し、画期的な新商品としてすぐに評判となったそうです。
大ヒットとなったシガールは当初、焼き上がった生地を一つ一つ手巻きで仕上げていました。それでは限界があるため機械化を試みるも、難しい技術を再現するのには10年もの歳月がかかったそうです。でも妥協なしに機械化できるようになったおかげで、当初から味も形も変わらないお菓子がより多くの人に届くようになり、現在に続いているのです。
そうして量産体制が整った頃だったでしょうか、私が子どもの頃に食べたシガールの思い出は。
どんな時に家にあったのか母に尋ねてみたところ、ギフト以外に、祖母が時どき孫たちのために買ってきてくれることや、ちょっとぜいたくなおやつをしたい時に母自身でも買い求めていたこともあったそう。
頂き物のギフトだとばかり思っていたので、わが家でもそんな風に求められていたとは、驚きでした。
ヨックモック缶の楽しみ
中のお菓子とともに記憶に焼き付いているのが、シガールが入っていた缶です。私が覚えているのはどうやら1974年に登場した2代目ヨックモック缶のようです。その他にもビエが入った縦長の缶もこの柄だったと思います。
缶を開けるとき、まずは缶のふちに巻かれたテープを剥がさなくてはいけません。それをクリアして内紙をめくると、整列したクッキーたちに会えるという楽しみもありました。
お菓子のギフトとして大きく成長したヨックモックの原点は、美味しさへのこだわりはもちろん、美しいデザインの缶入りにしたことも大きいのでしょう。
出会った最初には豪華感や特別感を演出してくれますし、最後に空になった缶は、家庭で便利な入れ物として使われていたように思います。今も実家を探したら一つくらい出てくるかもしれません。
現在も新しいデザインの缶を定番としながら、季節や地域限定のイラスト缶や色違い、お菓子に合わせたサイズなど、缶入り菓子の楽しみを残しています。クリスマスシーズンの賑やかなホリデー缶も可愛いですし、お年賀にはスリーブケースをつけてくれるので、また特別感が増します。
ギフトを選ぶ側も楽しく、いただいたときにも嬉しいのが、ヨックモック缶なのです。ラッピング包装紙や通常のリボンはシックなもので統一され、どんなシーンにも似つかわしい上品なのも、重宝されますね。
カフェやミュージアムも
ヨックモック青山本店は、ブルーのタイル張りが目を引く美しい外観で、1978年のオープン以来変わらぬ存在感です。限定スイーツなども扱うほか、アフタヌーンティーからディナーまで楽しめるブルー・ブリック・ラウンジも併設していて豊かな時間を過ごすことができます。
こうした拠点があることで、安定したコンセプトや開かれたブランドであることが感じられますよね。さらに2020年10月にはヨックモックミュージアムが、青山本店近くにできました。
「菓子は創造するもの」という創業者の想いを受け継いだミュージアムとして、かのパブロ・ピカソのセラミック(陶器)を中心にコレクション。その豊かで自由な発想に触れられるほか、アートセッションなどのイベント企画、カフェも併設するなど、新しい出会いや人と人とがつながる場を提供しているそう。
こだわりの建築や展示のデザイン、ピカソがセラミックで表現したアート作品とヨックモックのコラボレーションにワクワクしてしまいます。
なにかインスピレーションや発見が生まれそうで、ファンならずとも訪れてみたい場所ですね。
みなさんにもヨックモックの原体験はありますか?
こうして改めてたどってみて、昭和に生まれて急成長をとげながら50年余り、常に新しい挑戦を続けているヨックモックの勇姿を垣間見ることができました。
そこにはいつまでも変わらないシガールがあるから、安心できるしシンパシーを感じるのでしょう。各地にある喫茶室では、コーヒーにシガールが添えられて出てくるんです。
誰にでも愛されるお菓子は、自身にとっても嬉しい、思い出のお菓子だからこそ、これからもありがたくヨックモックを選んでいこうと思います。